聞き手
確かに、マンションの中でも低層階、特に「1階」の部屋は好みがはっきりと分かれ、買主を見つけるのに苦労します。
1階の部屋だと、マンションの魅力の1つである「開放的な景色や眺望」を楽しめないので、ある意味で仕方がないかもしれません。
しかし、元不動産営業マンの立場からお伝えすると、1階の部屋でも売れないことはありません。
1階の部屋を探している人が少ないのは間違いありませんが、検討している人は必ずいるからです。
もし売却がスムーズにいっていないのなら、「1階部分のメリットをちゃんと買主に伝えられていない」か、もしくは「そもそも探しているターゲットに情報が届いていない」という可能性があります。
1階の部屋のメリットを理解して、ターゲットとなる買主さんへしっかり伝われば、高値売却も不可能ではありません。
この記事では、元不動産営業としての経験から「1階の部屋が避けられる理由」や「売れる対策法」についてわかりやすく解説していきます。
あなたのマンションを「高く&早く」売り切るために、この記事で基本的な知識を身につけてくださいね!
マンションの1階が売れないのはデメリットが多いから!
マンションの1階にある部屋が売れないのには、いくつもの理由が考えられます。
- 日当たり
- セキュリティ
- 害虫
- 水害
- プライバシー
一つずつ見ていきます。
【1】日当たり
1階の部屋を選ぶ人が少ないのは、「日当たりが悪い」というイメージを持っているため。
日当たりが悪いと、
- 部屋が暗い
- 洗濯ものが渇きにくい
- 湿気がたまりカビが発生しやすい
など、デメリットがたくさんあります。
仮に南向きの部屋でも、目の前に建物が存在するだけで、日光が入る量が一気に低下します。
当然、1階だとその確率が高くなるのです。
日当たりを重要視する人は多いので、どうしても1階部分は避けられてしまいます。
【2】セキュリティ
マンションの1階については、セキュリティに不安を抱える人も多いです。
警視庁の調査でも「共同住宅の低層階は一戸建住宅に次いで『空き巣』に狙われやすい」ことがわかっています。
出典元:警視庁「住まいる防犯110番」
マンションの1階に関して言えば、マンションと戸建ての違いはあれど、「高さ」は一緒なので狙われる可能性は高いです。
さらに、1階では「下着泥棒」の被害に合う確率も他の階より高い。
そのため、1階は防犯面で不安が残り、特に「女性世帯」からの人気は低くなります。
【3】害虫
マンションの1階だと、高層階よりも「虫」に遭遇しやすいです。
1階は、マンション内で唯一地上に接しているので、
- 蚊
- クモ
- ムカデ
- ケムシ
- ゴキブリ
などがバルコニーや室内に入り込んできます。
マンション検討者の多くは、庭いじりに慣れておらず(したいとも思っていない)、虫に対しての免疫力が少ないです。
私も営業マンだった頃、「虫は何階から来なくなりますか?」とよく質問を受けました。
実際には、10階くらいの高さでも普通に虫はいますが、1階に比べるとやはり少ないです。
そのため、虫嫌いの人にとって1階を選ぶという行為自体が、すごく勇気のいる選択になってしまうのです。
【4】水害
マンションの1階は、ゲリラ豪雨や大型台風で起こる水害の影響をダイレクトに受けてしまいます。
近年では、テレビでマンションのエントランスが水浸しの映像をよく見ますね。
もし部屋に泥水や汚水が入ってきてしまうと、家具や家電は一瞬にしてゴミになります。
しかし、部屋が上層階であれば、水害を避けられ、あなたがこだわった家具家電を守れるのです。
このように、水害によるリスクも加ったことで、ますます1階部分の検討者が少なくなっていると言えます。
【5】プライバシー
マンションの1階だと、プライバシーの確保が大変。
歩く人と同じ目線に部屋があるため、カーテンをしておかないと部屋が丸見えになります。
私は以前、「常に人から見られている気がして落ち着かない」という理由で、1階の部屋の売却を担当したことがありました。
その売主さんは、かなり疲れたご様子で「安くてもいいから早く売ってほしい」とリクエストをされたほどです。
「家の中にいるのに落ち着かないのは、かなりストレスになるんだなぁ」と学んだことをはっきりと覚えています。
人によって温度差はあるのでしょうが、上記のような問題は、上層階だと起こりにくい悩みです。
マンションの1階でも売却できる7つの対策
ここからは、マンションの1階を「高く&早く」売却する方法についてお伝えします。
- まずは「基本的な対策」を取る
- ターゲットを絞る
- 内覧時は部屋を明るくする
- 独自のセキュリティをアピール
- こまめな害虫対策を施す
- 水害への備えを万全にする
- プライバシー対策としてカーテンを工夫する
上記7つは、誰でも簡単に実践できるものばかりなので、ぜひ試してみてくださいね。
それでは、早速みていきましょう!
【対策1】まずは「基本的な対策」を取る
まずはあなたのマンションが、基本的な対策のもとに販売されているか確認してみましょう。
確かに、1階であることが売れない一つの要因になっている可能性はあります。
しかし、かつてあなたが1階の部屋を購入されたように、必ず「1階の部屋でもいい」という人はいるのです。
そのため、もし売れないとすると、以下のように理由は他にも考えられます。
- 不動産会社(担当者)が無能
- 「老朽化」が進んでいる
- ランニングコストが高い
- 立地が悪い
- 価格が適正じゃない
- ライバル物件が多い
- 部屋が汚い
特に「売却を依頼する不動産会社や担当者の仕事ぶり」を見直すことはかなり需要。
不動産を高く早期に売却できるかどうかは、「不動産会社や担当者しだい」だからです。
経験があって能力も高く、仕事のできる担当者であれば、すべて丸投げでもちゃんと売ってくれます。
仮に売れない場合も、的確なアドバイスや問題解決の提案を元に、最後まで売り切ってくれます。
もし、あなたの今の担当者が信頼の置けない人であれば、不動産会社を変えたらすぐに売れるかもしれません。
マンションの売却の成否は「売却を依頼する不動産会社や担当者がすべて」といっても過言ではないです。
以下の記事では、不動産会社が売れない理由になっていることの詳細や、その他の基本的な対策についてまとめているので、一度チェックしておくことをオススメします。
【対策2】ターゲットを絞る
マンションの1階を売却するためには、「売りたい相手を絞る」のも有効な手段です。
これまでの経験からお伝えすると、ターゲットは以下の3つのタイプ。
- 小さいお子さんのいる家族
- 高齢者
- 庭が欲しい人
それぞれ解説していきます。
【1】小さいお子さんのいる家族
「小さい子供がいる家族」や「兄弟・姉妹が多い世帯」に、1階の部屋はオススメできます。
1階であれば、子どもたちが騒いでも、下の階の住民に迷惑がかからないからです。
マンションは戸建てと違い、上下左右の壁を隔ててすぐ隣は「他人の家」。
子どもが小さいうちは、走り回ったり飛んだり跳ねたりなど日常茶飯事で、その音は特に下の階に響いてしまいます。
SUUMOの「あなたが不満を感じている背景には、どんな体験がありますか?」の調査でも、騒音トラブルはナンバーワン。
もし、1階の部屋であれば、子どもたちが走り回っても下の階に迷惑をかける心配はありません。
そのため、子どもたちものびのびと成長できるのです。
上記のような理由から、「小さい子供がいる家族」や「兄弟・姉妹が多い世帯」には、1階の部屋をオススメできます。
【2】高齢者
高齢者は、マンションへの住み替えで「低層階」を選ぶ傾向が強いです。
理由は、地震や火事などの「災害」が起こった場合にすぐに逃げられるから。
避難時に「エレベーター」は使えません。
とは言え「階段」だと、高齢者は足腰が弱くて逃げるのに時間がかかり、逃げ遅れる可能性があります。
これは命に関わってくる問題なので、高齢者は私たちが思っている以上に真剣に考えています。
ですから、年配者が1階の部屋を探しているのは、よくあるケースなのです。
また、1階だとエントランスからの移動距離が短く、買い物した後の重たい荷物を長時間持たなくていい等のメリットもあります。
【3】庭が欲しい人
ガーデニングや庭いじりが趣味の人は、ターゲットに最適です。
マンションによっては、1階の特定の部屋にだけ「専用庭」が付いています。
専用庭は、バルコニーよりも広い場合が多いので、家庭菜園をしたり、子供用の滑り台を置いたりするのにピッタリです。
テーブルセットを組めば、仲の良い友達ファミリーを呼んでのちょっとしたパーティーが可能ですし、戸建て感覚の優雅なひと時を楽しめます。
「専用庭」以外にも「駐車スペース」として利用可能なマンションもあります。
家からすぐ車に乗り降りができるので、「荷物を運ぶ際には苦労しない」ということがアピールできます。
【対策3】内覧時は部屋を明るくする
いざ案内が入った際は、部屋の電気はすべてつけて、可能であればカーテンも開けておきましょう。
部屋が明るいと、買主さんに良い印象を与え、気に入ってもらえる確率が高まるからです。
私も過去に数回、1階の部屋限定で探している買主さんの対応しましたが、ほぼ全員が日当たりを気にしていました。
買主さん自身も、「1階なのである程度は陽が入らなくても仕方がない」と思ってはいます。
しかし、いざ見学した部屋が真っ暗だと高確率で引かれちゃうのが現実です。
そうならないためにも、各部屋や廊下の電気はすべてONにして、まわりに嫌悪施設がなければカーテンも開けるのがオススメ。
営業マンには事前に部屋に陽が入る時間をちゃんと伝えておき、その時間に案内してもらうようにお願いしてみましょう。
【対策4】独自のセキュリティをアピール
独自のセキュリティがある場合は、かなり強いアピールポイントになります。
「築10年前後~最近のマンション」だと、1階や2階部分にだけ「防犯センサー」が付いています。
この防犯センサーが鳴ると、インターフォンを経由して管理会社に知らせが入り、警備会社の担当者が駆け付けるようなシステムになっています。
これは低層階にだけ付いているサービスなので、もしあなたの部屋についている場合は、積極的にアピールしましょう。
低層階ならではのセキュリティ不安を一気に解消できますよ。
【対策5】こまめな害虫対策を施す
1階は、他の部屋よりも虫が出ることが多いので、普段からこまめな対策が必要です。
ちゃんとした対策ができれば、虫が発生したり、寄り付いてこなくなります。
効果的な方法としては、
- 網戸や外壁に虫よけスプレー
- 庭に水たまりができないようにする
- 換気口や室外機のホースの先端を専用キッドで塞ぐ
などがあります。
上記方法は、単発だとあまり効果が期待できないため、普段からちょこちょこやっておくことが大切です。
室内に関しても、できるだけ生ごみ等を放置せず、キレイな状態を保つよう心がけましょう。
【対策6】水害への備えを万全にする
1階の部屋は、水害の影響を受ける可能性が高いため、事前の備えが肝心です。
もし何も備えをしていなければ、これからお伝えすることを把握しておいてください。
- ハザードマップをチェック
- 止水版を常備する
- 火災保険に入ることを伝える
これらを、買主さんに伝えるだけでも安心してもらえます。
【1】ハザードマップをチェック
まず最初にやってほしいことは、「ハザードマップのチェック」です。
ハザードマップとは、一般的に「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」とされています。
ハザードマップを確認すれば、マンションのある場所に、どのような自然災害での被害が起きやすいのかがわかります。
もし、売却中のマンションの場所が「何の被害にも想定されないエリア」であれば、そのことは必ずアピールしましょう。
営業の経験上、ハザードマップは買主さんにとって、かなりの安心材料になります。
【2】止水板を常備する
もし浸水する可能性が高いなら、「止水板」を常備しておいてください。
止水板があれば、被害を軽くなります。
部屋を売る際は、用意してある止水板をプレゼントすると買主さんから喜ばれますし、「信頼できる売主さん」としてイメージアップも狙えます。
止水板はホームセンターや、ネット(Amazonや楽天)で購入できます。
【3】火災保険に入ることを伝える
万が一に備えて、火災保険に入るようアドバイスするもの良いです。
いくら十分な備えをしていても、想定以上の水害に合う可能性があるからです。
火災保険に関しては、販売担当者に事前に見積もりを作ってもらうといいでしょう。
水害が補償される内容で準備しておけば、その場で買主さんの不安が解消できます。
買主さんの中には、火災保険で水害がカバーされることを知らない人もいるので、この方法はオススメです。
【対策7】プライバシー対策としてカーテンを工夫する
立地的に外からの視線が気になるような部屋であれば、カーテンを工夫してみましょう。
- 遮像カーテン
- ミラーカーテン
上記2種類のカーテンを紹介します。
それぞれ特徴が異なりますので、あなたの家にはどちらが良いか検討してみてください。
実際に効果が期待できるので、案内の際、買主さんに直接確認してもらうといいでしょう。
【1】遮像カーテン
遮像カーテンは、カーテンを隔てて「どちらから」も見えにくくなるように作られています。
- 室内→屋外
- 屋外→室内
両方ともに見えにくくなるのが特徴です。
また効果としては、昼夜を問わないため、1日中外からの視線をシャットダウンできます。
【2】ミラーカーテン
ミラーカーテンは、屋外側が「光沢のある糸」で作られたカーテンです。
そのため、太陽の光を反射させ、「屋外→室内」を見えにくくすることが可能。
これだと、「室内→屋外」はある程度、視界が確保できます。
一方で、遮像カーテンとは異なり、夜に室内の電気がついた状態だと効果がなくなる一面も。
その結果、室内が見えやすくなるデメリットがあるので、厚手のカーテンをするなどの対策が必要です。
【まとめ】マンションの一階でも正しく対策すれば売れる!
今回は、マンションの1階が「売りにくい理由」と「売るための対策」について紹介しました。
- まずは「基本的な対策」を取る
- ターゲットを絞る
- 内覧時は部屋を明るくする
- 独自のセキュリティをアピール
- こまめな害虫対策を施す
- 水害への備えを万全にする
- プライバシー対策としてカーテンを工夫する
マンションの1階は、デメリットの多さから販売に苦労するケースが多いです。
しかし、「騒音を気にしなくてよい」や「独自のセキュリティがついている」などのメリットもあります。
そのため、「1階の部屋でもいい」という人もいますから、希望以上の価格で売ることも十分に可能なのです。
ただ、1階の部屋を売るために最も大切なのは、そういったターゲットを見つけられる「不動産会社(担当者)」を選ぶこと。
優秀な担当者を見つけられれば、これまで売れなかったのが嘘かのようにすんなり売れることが良くあります。
私が営業マンだった頃、「他社で売却活動してもらったけど、3ヶ月まったく売れなかった」という1階マンションの所有者がいらっしゃったことがあります。
そこで、私の上司が対応したところ「2組目の案内であっさり売れた」ということがありました。
このように、不動産は担当する営業の力量によって「宝石」にもなれば「石ころ」にもなるのです。
もし、今の不動産会社や担当者に違和感を感じているのであれば、思い切って不動産会社を変えることも検討してみてください。
上手くいっていないことを繰り返していても、悪い状況は決して変わりません。
これ以上、売れない状況で辛い思いをするのはやめて、問題を改善するための行動をとってみてください。
ちなみに、不動産会社を吟味する際は、複数の担当者の意見を聞くために一括査定サイトを使うことをオススメしています。
私(編集長)も、売却前は必ず一括査定サイトを使って、査定額と担当者を徹底的に比較しています。
また、当編集部では、日本にある一括査定サイトを全て検証し、「本当に使うべき不動産一括査定サイト」を比較しています。
この記事を参考にしてもらえれば、査定サイト選びに失敗することはないです。
営業マンにも得意な分野があるので、話を聞く際に「1階のマンションの販売経験」を聞いてみてください。
1階のマンション売却が得意な担当者を早く見つけて、「高値&早期」の売却を目指しましょう!