不動産を売却して利益が出ると「所得税」や「住民税」が上がるのは知っているけど、「介護保険料はどうなの?」と気になる人もいますよね。
介護保険料は月々徴収されるので、負担が増えると家計にダイレクトに直結し、やりくりが大変になります。
結論お伝えすると、不動産を売却して介護保険料がアップするのは、下記の両方に該当する人です。
- 売却で利益(=所得)が出る人
- 国民健康保険の加入者
介護保険の算定方法は、保険の種類によって異なっており、アップするかどうかは「国民健康保険の人」だけが当てはまります。
逆に言うと、「会社員」や「公務員」の人は、不動産を売却して利益が出ても介護保険料は上がりません。
詳しい理由は、本文で説明していきます。
この記事では「なぜ国民健康保険の人だけ介護保険料がアップするのか?」をはじめ、以下の疑問について詳しく解説していきます。
- 介護保険制度とは?
- 介護保険料の算出方法
- 介護保険料アップを抑える方法
「介護保険制度」や「税金」の話はとっつきにくいですが、できるだけシンプルにわかりやすくお伝えしていきます。
【結論】不動産売却で利益が出ると「国民健康保険」の人は介護保険料が上がる
不動産を売却して利益(=所得)があると、「国民健康保険の加入者」のみ介護保険料がアップします。
理由も含めて、介護保険制度の内容から解説していきます。
- 介護保険制度とは?【簡単に解説】
- なぜ国民健康保険の人だけ上がるのか?
介護保険制度とは?【簡単に解説】
介護保険制度とは、介護が必要な人が少ない負担でサービスを受けるために、社会全体で支える公的な制度です。
病気などで介護が必要になり「認定」をされると、収入に応じた自己負担割合(最小1割負担)で、介護サービスを受けられます。
介護保険制度の財源は「税金」と「介護保険料」によって支えられており、介護保険料に関しては「40歳以上の全国民から徴収」されています。
具体的には以下のように、年齢によって「第1号被保険者」と「第2号被保険者」に分けられ徴収されているんです。
第1号被保険者 | 第2号被保険者 | |
---|---|---|
対象年齢 | 65歳以上の人 | 40歳以上64歳までの医療保険加入者 |
保険料の徴収方法 | 市区町村が徴収 ※基本は年金から天引き | 医療保険者が徴収 ※医療保険料と併せて徴収 |
ポイントとしては「介護保険料は一生涯に渡り支払いが必要」で、「65歳になると徴収される先が変わる」こと。
ネット記事の中には、「介護保険料の支払いは65歳で終わる」とだけ書いているところが多いので、間違えないようにしておいてください。
介護保険制度は、高齢化を迎える日本にとって、みんなが豊かに暮らしていくために必要な制度です。
なぜ国民健康保険の人だけ上がるのか?
不動産を売却して利益が発生すると、介護保険料は「国民健康保険の加入者のみ」上がる可能性があります。
「国民健康保険」の人の介護保険料は、世帯ごとの「総所得」に基づき算出されるためです。
なので、不動産売却での所得(=利益)も含まれ、翌年の介護保険料の値上げにつながります。
しかし、保険料アップを抑える方法もあるので後ほど紹介しますね。
一方で、「健康保険」や「共済保険」に加入している人が不動産を売却して利益が出ても、介護保険料は上がりません。※「所得税」と「住民税」は課税されるので注意。
「健康保険」や「共済保険」の人の介護保険料は、「標準報酬月額」を基準に算出されるからです。
標準報酬月額とは、会社から支給される基本給に「役付手当」や「通勤手当」などの各手当を加算した「1ヶ月の総支給額」のこと。
もちろん「標準報酬月額」に不動産を売却した所得は含まれないので、「会社員」や「公務員」の人の介護保険料は上がらないんです。
わかりやすくまとめておきます。
保険の種類 | 国民健康保険 | 健康保険 | 共済保険 |
---|---|---|---|
加入者 | 「個人事業主」や「無職」 | 会社員 | 「公務員」や「団体職員」 |
介護保険料の算出方法 | 世帯の「総所得」が基準 | 「標準報酬月額」が基準 | 「標準報酬月額」が基準 |
不動産売却で利益あり | 介護保険料上がる | 介護保険料上がらない | 介護保険料上がらない |
なので、あなたが「個人事業主」や「無職」であれば、不動産売却で介護保険料がアップする可能性があることを知っておいてください。
不動産売却による介護保険料UPは「控除」で抑えられる
ここからは、不動産売却で介護保険料が上がるかもしれない「国民健康保険加入者」に向けて、保険料アップを抑える方法をお伝えします。
その方法とは、「特別控除を利用する」ことです。
特別控除とは、課税される税金への負担を軽減するためにある制度で、利用すると所得(=利益)を圧縮できます。
つまり、介護保険料の算出元である総所得そのものを減らせるので、保険料アップを回避できる訳です。
ちなみに、「2018年3月まで」は特別控除を使った場合、税金の圧縮はできても、介護保険料などの保険料を減らすことはできませんでした。
「税金」と「社会保険」は、もともと異なる制度だからです。
しかし、不動産を売却して「税金は減らせたのに介護保険料は増額されるというアンバランスな状態がおかしい」という話が巻き起こり、法律が改正されたんです。
なので、現在では、特別控除を使うと「納税額・保険料」ともにアップ回避ができるので、もはや使わない手はないと言えます。
次の章では、「特別控除」をいくつか紹介していきます。
最も代表的な「3,000万円特別控除」のほかにもお伝えするので、当てはまりそうなものがないかチェックしてください。
「3,000万円特別控除」とは?
不動産売却の特別控除で、最も有名なのは「3,000万円特別控除」。
この特例は、不動産(マイホームに限る)を売却したときの所得から「最大3,000万円」を控除くれる特例です。
具体的に、売却して2,500万円の所得(=利益)が発生しても「3,000万円特別控除」を利用すれば、以下のように所得がなかったものとみなされます。
ですから、不動産売却に絡む「所得税」や「住民税」の支払いは発生しません。
介護保険料についても上記と同じ考え方で算出されるので、当然に納める料金は上がらないんです。
ただし、注意点があります。
3,000万円特別控除を適用しても所得がゼロにならない(=プラスになる)人は、「税金」&「介護保険料」が確実にアップします。
でも、実際にアップする分は、特別控除を利用することで相当な圧縮が可能です。
ですから、特例を利用しないときに比べて、かなり安くなりますよ。
3,000万円特別控除については、「マイホームに限る」など利用するための条件があります。
詳しく知りたい人は、国税庁の専用ページを載せておくので、確認してみてください。
また、不動産売却での所得についての「考え方」や「計算方法」を知らない人は、以下の記事をチェックしていただくと解決できますよ。
【その他】介護保険料控除の対象となる不動産売却
3,000万円特別控除のほかにも、不動産売却で適用のできる特別控除があるで紹介していきます。
それぞれの内容についての「簡単な解説」&「関係省庁の該当ページ※」を貼り付けておきます。
※該当ページがない場合もあります。
- 譲渡所得から最高 5,000万円までの特別控除を差し引く特例
- 特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
- 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円控除
- 農地保有の合理化のために農地等を譲渡した場合の所得の特別控除
- 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
- 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除
譲渡所得から最高 5,000万円までの特別控除を差し引く特例
この特例は、「土地収用法による収用」や「収用を背景とした売買契約」などによって、不動産を譲渡した場合に使えます。
原則として譲渡が公共事業施行者からの買取りの申出があった日から「6か月以内」に行われるなどの要件を満たしているときに、その譲渡益から「5,000万円」を差し引くことが可能です。
特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
この特例では、国や公共団体が実施する「土地区画整理事業」や「住宅街区整理事業」など開発により、土地等が買い取られた場合、「2,000万円」の控除を受けることができます。
この特例を受けるには、施工区域が「30ha以上」でなければいけないほか、「買換え特例」等の併用ができないので注意しましょう。
特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円控除
この特例は、以下のような状況で発生する譲渡所得から「最大1,500万円」を差し引くことができます。
- 地方公共団体などが行う「住宅の建設」または「宅地の造成」を目的とする事業のために不動産を譲渡した
- 土地収用法等に基づき、その収用の対償に充てるために土地等を譲渡した
- 公有地の拡大の推進に関する法律など「特定の法律」に基づいて、土地等を譲渡した
農地保有の合理化などのために土地を売却した場合の800万円の特別控除
この特例は、農業振興地域の整備に関する法律に基づき、農業委員会の斡旋等によって土地を売却した場合に使えます。
一定の要件を満たすと譲渡所得から「800万円」を控除できます。
平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
この特例では、平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地等を取得して、特定の時期に譲渡した場合、所得から「1,000万円」を差し引くことが可能です。
注意点として、他の譲渡所得の特例と併用できない場合があるので詳しくは以下をチェックしてください。
低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除
この特例は、個人が令和2年7月1日から令和4年12月31日までに、都市計画区域内にある一定の低未利用土地等を「500万円以下で譲渡」した場合に使えます。
発生した譲渡所得から「最大100万円」を控除することができます。
特例を利用するためには、「所有期間が5年を超える」などの複数の要件を満たさなければいけません。
【まとめ】介護保険料は上がるかは不動産売却の結果次第!
「不動産を売却して利益が出る人」 +「国民健康保険の加入者」は、介護保険料がアップします。
介護保険料は、加入している保険の種類によって算出方法が変わるからです。
「国民健康保険」だと不動産の売却を含んだ「総所得」が基準になり、「健康保険」や「共済保険」だと「標準報酬月額(月々の給与)」が基準になります。
要は、「個人事業主」や「無職の人」が不動産を売却すると、介護保険料がアップする可能性が大いに高いのです。
しかしながら、売却で所得(=利益)が発生する場合も「特別控除」を使うと、保険料のアップを回避できます。
また、特別控除を利用すると不動産売却に絡む「所得税」や「住民税」の圧縮にも期待ができるので、必ず使うべきです!
もし「どの特例が使えるかわからないとき」や「ほかの優遇制度と併用で利用したい場合」は、各自治体にある「税務署」に問い合わせることをオススメします。
ちなみに、不動産売却にかかる税金は「ふるさと納税」を使うとお得になりますよ。
気になる人はチェックしてみてください。↓
「保険」や「税金」は、思い込みで手続きを進めるとのちのち大きなトラブルになる可能性があるので、ちょっとでも疑問があれば迷わず話を聞いてみましょう。
「介護保険料」や「その他公的保険」について不明な点は、各自治体にある「地域包括支援センター」に問い合わせることで解決できますよ。
最後になりますが、このサイトでは、不動産売却に関する情報についてまとめています。
「自分で調べると難しい税金に関する情報」や「不動産を高く売る方法」についての記事もありますので、興味があれば他の記事も読んでみてくださいね。
それでは、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
不動産売却アカデミー編集部